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ゴルフがうまい、というホメ言葉には三つの意味がある。
一つは、一般にハンディキャップが低い人のことである。
ショットもパッティングもうまい。
バンカーの目玉も手堅く一発で出すし、林の中からの脱出も冷静沈着。
悪くてもボギーで切り抜ける。
なんでそんなにうまいのだろうか。
それは、自分のボールの現状認識と、次なるターゲットへの読みが確かで、現状をどうするかの判断力、技量がともに優れているからである。
ゴルフがうまいとは、1打ごとに直面する現実への対応能力が優れているということにはかならない。
ゴルフがうまい、にはもう一つ意味がある。
ラウンドの進め方が大変スムーズなゴルフをする人のことである。
他の人を待たせることがない。
キャディさんを走らせることがない。
人のロストボールはすぐに見つけるし、グリーンに乗ればピンを持ったり抜いたりしてくれるし、終わると差し役に回っている。
人のナイスショットは笑顔で讃えるし、会話もさりげなくて楽しいし、自分がミスショットしても怒ったりくさったりしない、という人である。
その場その場で自分は何をしたらいいか、どこにいて何をするのが一番いいか、ということが分かっている人。
この人もまた、目の前の現実への対応能力に優れているということがいえる。
両方の「現実対応能力」が備わっている人は、最高のゴルファーである。
が、ゴルファーがみんなそうではない。
むしろ、そう多くはいない。
球さばきはきわめて優れているが、もう一つのほうがどうも違うと思える人が少なくない。
「うまいけどねえ、あんなに威張らなきゃいいんだけど」とか「スコアは見事だけど、スローだねえ」と陰口を言われ、たいていは嫌われる。
せっかく球さばきの腕前は一流なのに、ワリの合わない話である。
なぜだろう。
実生活でも同じである。
仕事の上では有能で、実績も上げるし、リーダーでもあるのだけれど、どうもプライベートでは付き合いたいという魅力を感じない、そういう人がいる。
この逆もあって、仕事ではまあまあだけれども、ずっと付き合っていきたい、そういう人がいる。
スコアのほうはシングルクラスではなく、むしろボギーペース、ダボペースではあるけれども、技量とは別に、もう一つのほうがうまい人がいる。
好かれる、また一緒に回りたい、と思われるタイプの人である。
この人も最高のゴルファーなのである。
なぜなら、私たちアマチュアのゴルフで「また一緒に回りたい人」とは最高級の評価だからである。
アマチュアのゴルフは社交のゲームである。
技量よりも先に、だいじなものがある。
それさえあれば大丈夫、それがないと困るというものがある。
自分の愉快、不愉快を考える前に人の愉快、不愉快に気づくこと。
ゴルフにおけるだいじな順番である。
地形が上っているとか下っているとか、池に向かって傾斜しているとか、上空には横風が吹いているらしいとか、マウンドの向こうにバンカーがあるらしいとか、ピンは手前らしいとか、ゴルフコース攻略は気づきである。
ゴルフコースは楽しくもあり悔しくもある。
錯覚デザインの世界だから、その仕掛けに気づかないことには勝ち目はなし三人ないしは二人の同伴者とキャディを伴って、一緒に楽しむゲームである。
みんなが平等に遊ぶ権利を持っている。
働くキャディだって楽しく働く権利がある。
同様の組が前後にいる。
後に続く組を待たせることのないように、なるべく速くスムーズに進行しなければならない。
それには、プレーヤー一人ひとりが、自分の打順が来たら速やかにプレーできるように備えながら進行しなければならない。
しかし、私たちのゴルフはそうそうみんながうまく打っていけるわけではない。
あらぬほうへ飛んでいったボールのリカバー、そしてあらぬほうへ飛んでいる気持ちのリカバー、さっきは自分、今度はあの人、助けられたり助けたりである。
ショットのトラブルが続発しても、目配り、気配り、そして今、誰が、どこにいて、何をするのが一番いいか、その気づきがあればみんなの愉快は保たれていく。
それさえあれば、調子がイマイチでもゴルフは楽しい。
スコアメークの競技ゴルフも、それはそれとしてのお楽しみゴルフも、仲良しとの付き合いゴルフも、すべて気づき次第だ。
ゴルフマナーは気づきで分かる。
気づけば当然のことばかり。
気づいて考えてみれば、どうすべきかが分かることばかりである。
そのことをまず、朝の挨拶から考えてみよう。
朝ゴルフ場に着く。
あなたは玄関でポーターやキャディと挨拶を交わすだろう。
フロントでもカウンターの係と挨拶を交わすだろう。
今日の仲間と会ったらもちろんにっこり笑って「おはようございます」と言い、「よろしく」とか「しばらく」とかの愛想を言い、相手によっては続けて冗談を言ったりするだろう。
挨拶を交わすのは、これらの人たちとだけだろうか。
名前も知らない、顔を見るのも初めてという人と駐車場で会ったときは?廊下ですれ違う人とは?ロッカーの同じコーナーをともにする人とは?打ちっ放し練習場で隣の打席で練習中の人とはどうなんだろうか。
この人たちとも挨拶をしないと、ゴルファーとしてはちょっとまずいのである。
欧米を旅したことのある人はお分かりだろう。
欧米の人はホテルの廊下ですれ違うとき、エレベーターに乗り合わせるとき、目と目を合わせ微笑んで挨拶を交わす。
彼らの日常的な社交習慣なのだが、これは互いに安心を得るマナーなのだ。
にっこりとうなずき合うのは、「仲間だよ」「仲間だね」のサイン出しなのである。
人と出会ったときの挨拶は、もともとは同じ町(コミュニティ)の者同士、仲間同士、縁者同士の、人間の基本的なコミュニケーションなのだが、知らぬ者同士の関係が多くなるホテル内のような都会の場になればなるほど、とりわけ欧米のように異なる人種が入り混じる場になればなるほど、ある種の緊張感が生じるから、いっそう挨拶が必要になる。
同じ場を共有する者同士の「仲間だよ」「仲間だね」の安心を約束しあうための挨拶が必要になるわけである。
今日の日本人は、知らぬ者同士の挨拶が下手になっている。
面倒くさがりで、愛想がなく、自分だけ自分たちだけよければよしのわがまま。
ある人はそれを平和ボケという。
阪神・淡路大震災で震災したマンションの住人たちは、それまで挨拶なしの人間だったのだが、あの日を境に、挨拶し合い、互いに声を掛け合う関係になったというではないか。
情報や水の欠乏から互助の協同生活を余儀なくされたからなのだ。
日本の日常は、一見、協同生活意識を持たなくても暮らしていけるように錯覚しているだけなのだ。
あまつさえ、日本人はダイレクトに視線をぶつけ合うのは苦手。
しかも風習として、相手の目を少し外して見ると穏やかでよいという優柔な礼法を先祖から受け継いでいる。
だからアイコンタクトの生活習慣がない。
目が合っちゃうと面倒だ、などという感覚すらないではない。
ふだん私たちがビジターとして訪れるゴルフ場は、知らない者が大勢集まる都会と同じような人間関係の小社会である。
緊張しなければならない社会なのである。
挨拶が必要になるわけである。
知らぬ者同士だからこそ挨拶を、という考え方をゴルファーは持たなければなら考えてほしい。
連れ立ってきた同じ組の四人だけが仲間ではないのである。
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